むかしの「昔のことせ!」 むかしの「昔のことせ!」

 

このコンテンツでは
過去の「昔のことせ! ー村上むかし語りー
再掲しています。

 

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著者は村上市の郷土史研究家
大場喜代司さん(故人)です。

 

石田光和さんによる
イラストとともにお楽しみください。

 

2021/03/15

002 おせち

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イラスト:石田 光和(エム・プリント

 

年中行事の多くは15日と8日に行われる。6月15日「天王祭」、8月15日「芋名月(いもめいげつ)」、11月15日「霜月祭」、2月8日「事始め」、4月8日「卯月祭」、12月8日「納め八日」である。次は7日で、1月7日「七草」、7月7日「七夕」である。また朔日(ついたち)も重要視された日であった。

 

これらの日は月の運行に関係している。満月になる日は15日前後で、半月になる日が7日前後である。なぜ月の満ち欠けが重要であるかは、その日が満潮日で春の大潮・秋の葉月潮(はづきじお)にゆえんする。

 

すなわち、海の彼方の常世*(とこよ)から寄せ来る満潮(常世波/とこよなみ)に乗って祖神が訪れる。その神を迎えるため、人々は禊(みそぎ)をして、身についた穢(けがれ)を落とす。そうすることにより若やぎ、死者もよみがえると信じていた。
*永遠の国

 

その名残が今日(こんにち)の正月元旦(1月1日)、上巳(じょうし/3月3日)、端午(たんご/5月5日)、七夕(7月7日)、重陽(ちょうよう/9月9日)の5節である。

 

その5節を現在は「節句」と書くのが一般的であるが、元々は「節供」と書いた。節に訪れる神に供える食物の意である。それを人々は神とともに食べ、延命を祈願する。

 

ゆえにそのつど年を重ねるのではなく、若返るのであった。こうした願望や意味が忘れられて久しく、節句と書くのが当然となった。正月料理のおせちは節会(せちえ)に神に供える食物の意味であった。

 

なお、常世波は地下をくぐる水となり、どこまでも続き、正月の若水となり、よみがえりをもたらす。

 

 

大場喜代司
『むらかみ商工会議所ニュース』
(2008年2月号掲載)村上市史異聞 より

 

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