イラスト:石田 光和(エム・プリント)
いまさら言うまでもないが、6月晦日は夏越の大祓の日である。この行事は全国いたるところの神社が行っていて、夏に浮遊して人々に禍(わざわい)や疫病をもたらす邪霊を祓い、延命を祈願する行事であるといわれている。その日に無病息災を得るために行う「茅の輪(ちのわ)くぐり」という呪(まじない)ごともある。
すなわち、強くて生命力の旺盛な茅(かや)には、神霊が宿るとされていたから、茅を束ねた輪をくぐることにより、神威が身体に憑(つ)くと信じられていた。また、この日には牛を海水に浸して害虫を落とすことも行われていた。これが土用の牛湯治に移行する。
しかし、わが国で牛が広く一般に農耕用として使用されるのは江戸時代からで、その以前は馬の使用が多い。平林城主 色部氏の『色部氏史料集』に6月の行事の「馬越(むまごし)」の到来品として「御茶、扇、白蒜(ひる)、干魚」などが記されている。
この馬越とは一体なにを意味する行事であろうか、と疑問であったが、馬の夏越であろうと推察するにいたった。それが牛の使用が多くなると牛の夏越に変わっていったと考えられる。
とはいえ、こうした行事は比較的時代が浅く、もともとは歳末の大晦日と同じく6月晦日も祖霊神を迎える日であったとされている。晦日から神を迎える準備をして、7月7日から精進潔斉に入り、盆の13日に祖霊が訪れるとすると、7日ごとの節目で月の満ち欠け・潮の干満に深く関わってくる。
大場喜代司
『むらかみ商工会議所ニュース』
(2008年5月号掲載)村上市史異聞 より